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男色大鑑

詠めつゞけし老木の花の頃
今年主水〈○玉島〉は六十三、半右衛門〈○豊田〉は六十六まで昔に替らぬ心づかひ、二人共に一生女の顔おも見ず、此年迄世お過しは、是恋道少人お好る鑑ならん、今もまだ主水お若年のごとく思ひつづけて、黒き筋なき薄鬢に、花の露おそゝぎ、巻立に結なすもおかし、気おとめて見しに、此人は角お入たるよしもなく、生付の丸額、是ぞかし、不断も以前お忘れずして、壼打の楊枝(○○○○○)手ふれて歯お磨くなど、髭おぬき捨、しらぬ人の見ては、かゝる分とはよもや思ふまじ、