[p.0585][p.0586]
都風俗化粧伝
下/身嗜
朝起ては、歯およく磨、楊枝おもて、歯の間の滓お去るべし、
又楊枝おふかくつかひ、又くせになりて無用の時にやうじおつかふ人あり、甚だ歯お損じてあしゝ、
又楊枝にて舌の上の滓おなでさり、食事の後は湯か茶お口にくゝみて、歯の間に挟たる食物の滓お吐去べし、
○按ずるに、楊枝お以て舌上の垢お去ること、我が邦にては、楊枝おのみ用いて、別に刮舌刀おば作らざるなり、然るに仏家にては古くは別に作りて、楊枝とは其用お異にせり、但し時に或は楊枝お擘きて刮舌刀の代用にしたることもあり、其詳細は、左に掲ぐる文に拠りて見るべし、