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笈雉随筆
十二
奇婦
近き安永年間に、京一条寺の百姓二人連立、柴木お苅ん為、叡山の北の尾、横川に近き山中にて、思ふ、程柴おして、もはや帰らんとて立上り谷越に向ふお見れば、恐しき異形の者岩上に立居たり、〈○中略〉一さんに逃下り我家に走り入より、あつと呼び気絶したり、〈○中略〉松宗能々見て、〈○中略〉又庭に大盥(○○)お取寄せ、冷水おなみ〳〵と湛へ、彼の歯の根も合ず震ひ居る病人お赤裸になし、大勢立懸り彼盥の水中へ押入しかば、〈○下略〉