[p.0619]
守貞漫稿
二十五/沐浴
小桶は京坂と同制、高宣ともに概六寸、銅或鉄輪おかけ、桶は槙材の正目制也、〈○中略〉
留桶大さ大概高六寸、宣り八寸に一尺許の楕円也、俗に雲小判形なり、輪同前、是亦槙の正目或はさわら材也、 右五節の内七夕お除て中元に与ふもあり、又十月二十日前に留桶新制にするの条お紙に書て、水槽の上に粘す、此時常に留桶お用ふ、彼留桶の客等、各自銭お与ふに有差、或は金二朱一分、又は銭三五百文二百文お極下とす、其銭数と名お紙に書て羽目板に粘す、二十日至り留桶小桶ともに新制お用ふ、蓋輪は作り改むるに非ず、 天保前は外見お好むの徒銭お多く与へて、留桶に定紋お漆書させ、或は記号の烙印おするもあり、天保以来此こと廃す、今用之は却て数年お用ふのみ、留桶の客、何の浴戸にも男子には十人の中一人、百人に十人ばかり、婦女は用之者十人に九人、不用之者百人に十人也、〈○中略〉右留湯留桶ともに京坂には更に無之行ひ也、