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棠大門屋敷

宝の山万里の下り坂あくる二日も元日にかはらぬことぶき、焼初とて風呂おとめさす、此代壱歩づゝに極れ共、客の器量次第、風呂屋の馳走によつて、高下品々あり、風呂へは下帯ながら入、ふろあがる時、銘々の下帯濡ながら板の間に捨、幾筋にても極て湯汲が物となりぬ、太夫よりそろへのゆかた、四尺五寸の大風呂敷、いづれも是お敷、引ふね大臣の後へ廻て、ゆかたごしに御背お撫て、髪おときすき立て後、香おとめ、ひつしこきにて、茶せん髪、やり手が役として、羽二重の大はゞお下帯だけに引さき、端縫なしに人数程出す、風呂屋より吸物にて酒おすゝむ、此仕払金三ばいにおよぶ、