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甲陽軍鑑
十一上/品第三十五
扠又山の上より信玄公御覧ずれば、北条陸奥守備より、白き羽織きたる武者一人先にすゝみ、勝頼備にむかつてかせぐ様子、一段見事なり、〈○中略〉二人してわきうしろよりくみ生捕て参れとありて、弐十人衆頭伊藤玄蕃、あひ川甚五兵衛二人、御中間頭原大隅、石坂勘兵衛以上四人、如御意に仕り、軍始まると同時に、彼武者お生捕、白手巾のながきおもつてしばり、信玄公御前にひきすゆる、其名お尋被成候へば、北条陸奥守内大石遠江とて大剛の武士也、