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好色一代男

髪きりても捨られぬ世
小耳にもおもしろき時は十五才にして、其三月六日より角おも入て、ぬれのきく折にふれて蛍みるなど催して、石山に詣でけるに、然も其日は四月十七日、湖水も一際凉しく、水色のきぬ帷子に、とも色にさいはい菱おかすかに縫せ、あつち織の中幅前にむすび、今はやるふぎ懸手拭(○○○○○)塗笠のうち、隻人とも見えず、