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守貞漫稿
十五/男服
手拭 てぬぐひと訓ず、手巾也、晒木綿一幅お長く鯨尺二尺五寸に裁ち用ふ、 木綿は播州木綿お専とす
手拭に種々の染形お用ふ、縞お用ひず、〈○図略〉
芥子玉絞(○○○○)りと雲、手拭に多き形也、地白に藍絞り也、京坂にては、しらみしぼりお専名とす、木綿買はけしたまと雲也、江戸は木綿買に非る人も専ら芥子玉と雲、しらみは虱也、絞り紋小にして虱の大さ故に名く、板じめ染也、又形芥子玉に似て絞り文の大なるお豆絞(○○)りと雲、絞文豆の大さ故に名く、
半染手拭(○○○○)と雲、右図〈○図略〉の如く半斜に片白片藍の無地、或は片白片水浅葱、或は片白片浅葱に小紋ある物等小紋は白也、
右の二品等お専とす、其他種々の紋お染め、或は絞り用ふ、 又手巾に、江戸にてかめのぞき(○○○○○)と雲あり、極て淡き水藍染の無地也、手巾全くお水浅木に染る也、藍瓶お睨くのみと雲意にて名付く、種々の摸様お染め、或は絞る物、地白文藍、或は地藍紋白もあり京坂祭祀等に出る衆人は、紅染(○○)お諸人一様にする等あり、其党の有因目紋お描く也、江戸にては更に紅染お用ひず、祭祀等一様の者も藍染に坊名お書けり、鄙には常に紅文交へたる手巾お用ふ者あり、
城州小原女の黒木売の用ふる所は、地瑠璃紺にして、右図〈○図略〉の如く、両辺に和歌お書けり、字白也、是一種の手巾、希に他人も用之て好数とす、
大坂堂島の米賈所用の手巾、地白に摸様大形に紺染也、専ら筆意摸せり、摸様種々大略図〈○図略〉の如お専とし、他准之也、普通手巾価百十六銭或は百二十四銭也、此堂島手拭は木綿厚く紺色美にして、価銀四五匁より金二朱許りに至る、是お竪四つ折にして肩に掛く、彼徒の標目とし、或は実用の手巾は別に携ふもの多し、
追書、天保中、手巾価六七十銭より百銭に過ず、今慶応中、三百銭より三百四五十銭お普通の物価とす、堂島手巾准之ば幾文なる歟、後日聞得て誌之、