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栄花物語
二十四/若枝
けふも〈○万壼二年正月二十三日〉四条大納言、〈○藤原公任〉うちのおとゞ、〈○藤原教通〉まいらせ給はず、故うへ〈○公任女〉の御忌月なりければ、うちのおとゞはむげにまいらざらんはおぼつかなくゆかしとて、御なおしにてうちに参らせ給て、女房の中にまじらせ給ひて、きぬのそでぐちつくろはせ給、かみかきなでなどせさせ給お、女房中々いとわびしう、身よりあせあゆなどは、これおやいふらんとわびしうおぼえて、おもてあかむ心ちすれども、身はひえたり、おほかたのありさまは、御まへの御覧ずるお、はづかしういかに〳〵と、人のかたちふるまひよりはじめ、きぬのありさまにほひなどお、御らんずとわびしくおの〳〵おもひつゝ、このなみいてみ給ふらんめどもは、さはれたれともしられ奉らねば、御霊会のほそおとこのてのこひして(○○○○○○)、かほかくしたる(○○○○○○○)こゝちするに、このうちのおとゞほゝえみまぎれさせ給ぞ、いみじうわびしき事なりける、