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守貞漫稿
十五/男服
手拭頬冠(○○)
頬冠り、多くは手巾の両端お、左にて捻て挟む也、〈○図略〉 同 或は鼻上に掛て左頬に捻り挟む、卑賤中の卑賤風也、〈○中略〉
手巾全幅の儘かむり、或は背の方三四分にて髷尻お僅に出す也、 又芝居にて男女情死等に往くお道行と雲也、其男に扮す者は必らず手拭頬かむりおなす者多し、是には専ら全白の手巾お用ふ、
手拭大臣冠り(○○○○○○)〈○図略〉 江戸にて吉原かむりと雲 三都士民ともに野歩等に為之、或は薄暑お避け、或は塵雉お御ぐ、 大臣と雲は芝居大尽に扮す、大名等の扮には、紫巾お以て月代おおヽふ、似之が故の名なるべし、 手巾二つ折、背の両隅お髷後に一つ結び止む、
江戸天保中暫く流行る、手拭是も二つ折にて前の両隅お鼻に掛て結び止め、笠なき人薄暑お防ぐ、盛暑にも無笠は為之、〈○図略〉
手拭米屋冠り(○○○○○○) 手拭の或は左、或は右の端より巻き、上の方お寄せて巻終りの端前隅お挟む也、京坂は初め眼お覆ふ許りに巻き被り、終りに隅お額に出し、眼お覆ひたるお上に引返し挟む也、乃ち上図〈○図略〉の如し、
江戸は初より目上に巻き被り、終りに前隅お上図〈○図略〉の如く額に挟む、
手拭喧嘩冠り(○○○○○○)〈○中略〉 喧嘩冠りも、右或は左より巻被、巻初の端と巻終の端、背の両隅お髷尻に掛て結び止む、 喧嘩冠りと号すは、江戸防火夫等、党おなして争いどむことあり、其時半紙二三十枚お水にひたし頭に当て、其上お図〈○図略〉の如くに手巾お冠すれば、鳶口と雲具お以て討るとも、深疵お負ずと雲り、是等の事より名とするなるべし、