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嬉遊笑覧
二上/服飾
鉢巻は男女ともにふるきふり也、田舎の女は木綿の単なる物お帯したる上に著、鉢巻するお礼服とす、今も武州近在また下総辺にて婚姻など賀祝の事ある時は、其家また親族の婦はつせといふ歌おうたふに、その体なり、〈(中略)むかし、女は膏沢お用ること少なければ髪乱れ易き故、包みもし鉢巻もせしなり、道三の養生物語に夜いぬるには頭巾は毒なり、鉢巻よしとあり、昔人は髪に油け少きゆえ髪乱れば、いぬるもかやうのことあり、〉 今駕籠かく者に、手綱染のやうなる布おたゝみて挿むは鉢巻せむ料の手巾なり、乙州がそれ〳〵草に、六尺は鉢巻に懐おあづけ、鎗持は髭お是とすといへり、〈鉢巻とて頭に桶の箍かけたるやうに、手巾おしごきて結ぶのみにはあらず、頭お包むはみな鉢巻なり、古画には六尺の鉢巻種々の形あり、〉又神仏に詣る行人の頭つゝむも手巾なり、