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世間姑気質

姑が寺参りお待て居る嫁が楽みは、生薬の匱の中、召遣ひの丁稚まで舌うちする二日目のよい加減、
夫の留守なれば、常よりも見世戸立のしまりに念お入れ、四つ時より家内夜さとうふしけるが、〈○中略〉黒装束に、大小きめし大男が五人ながらのきみひつさげ、丁稚は前後もしらず寝入居る故、嫁と姑おひきづり起し、後手にひつくゝり、胸元べぬきみおつき付、小体なれど金はありさうな内、有所おぬかせばよし、さもなくば今二人ともさし殺すと、いやおうならぬ命のつばぎはに、〈○中略〉嫁があまり是はどうよくなといふ口お手拭にて縛り、〈○下略〉