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世事見聞錄

遊里売女之事
偖昔の如き優に艶しき志ある遊女は一人もなく、〈○中略〉己が身心悩乱したる儘に、我人お語らひ、或は出奔せんと欲して意お破り、屋根お傅ひ、或は土台お潜り、塀お越、堀お渉り抔する迚、見顕はされて折檻に逢ひ、又は逃課せて隠れ居るお捜し出され、是等公辺へ訴出れば、〈○下略〉欠落のみ不埒に成て叱り咎られ、訳もなく引戻され、扠此時の仕置は別て強勢なる事にて、或は竹箟にて絶入迄に打擲き、又は丸裸に成し、口には輿のごとく手拭お喰せ、支体お四つ手に縛り上げ梁へ釣揚げ打事也、〈○下略〉