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家什具には室内の装飾、及び衣類器物等お収蔵するえ用いるあり、或は炭火お置きて暖お取り、若しくは家屋の内外お栖掃するに用いるあり、厨子、黒棚、櫃、長持、箪笥、箱、籠の類は、其前者に属し、火桶、火鉢、箒、塵拈の類は其後者に属す、
厨子はづしと雲ひ、又竪櫃(たてびつ)とも雲ふ、其構造には二階、三階なるもありて、蒔絵、螺鈿、黒漆等お以て之お髹り、調度若しくは食物の類お載するものなり、
櫃はひつと雲ふ、唐櫃〈一に韓櫃に作る〉明櫃、長櫃、小櫃、細櫃、杉櫃、小袖櫃等の別あり、
長持はながもちと雲ふ、長櫃の類にして、木地なるあり、髹漆お施せるあり、之お荷ふに朸お以てす、而して別に車輪お施して以て牽出の便に供するものあり、之お車長持と雲へり、
箪笥はたんすと雲ふ、又竪櫃の字おも充つ、
箱ははこと雲ふ、篋、筥、匡、匪、函、笈、匣等の字お用いる、木製あり、革製あり、其種類には手箱あり、隅赤あり、柳筥あり、乱筥は広蓋の類にして、文匣の事は文学部文匣篇に詳なり、
広蓋はひろぶたと雲ふ、原と衣筥の蓋なりと雲ふ、
籠はかごと雲ふ、多く竹にて作る、又一種革にて作れるあり、之お皮籠と雲へり、
葛籠はつヾらと雲ふ、葛にて作れるに由りて此名あり、行李はかうりと雲ふ、藤竹等にて作る、又柳条にて作る、之お柳行李と雲へり、
囊はふくろと雲ふ、口お括りて器物お蔵するの具なり、燧に燧袋あり、弓に弓袋あり、琵琶に琵琶袋あるが如く、収むる所の器物に従ひて、其名お異にす、各篇に就て見るべし、
火桶はひおけと雲ふ、木にて作り、外面に絵画お施すものあり、後世瓦にて作れるお瓦火桶と雲ふ、又土火桶の名あり、
火鉢は又飯銅、火炉の字お充て、共にひばちと雲ふ、木にて作れるあり、土にて作れるあり、金属にて作れるあり、其形状も亦一ならず、
火闥はこたつと雲ひ、又あんくわと雲ふ、近世の創作に係る、裀褥お覆ひて以て暖お取るの用に供す、
箒ははヽきと雲ひ、後にはうきと雲ふ、羽箒、椶櫚箒、竹箒、草箒等は、其用の最も多きものなり、