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調度口伝
一御厨子棚之事
此名目は大内の御厨所の棚お表し作りたる故の名なり、大〈さ〉長〈さ〉三尺三寸に総高〈さ〉二尺八寸、広〈さ〉一尺三寸、梨子地蒔絵紋ぢらし、螺鈿お最上とし、其頃梨子地紋ぢらし、黒塗蒔絵紋ぢらし、黒塗紋ぢらし、くろ塗鋳掛地等、其主の分限、又好に依べし、又沈の御厨子は沈木にて作る、又沈木お略して唐桑にて作り、又唐桑お略し、雑木に色お付るも有べし、又面押とて、上お錦にて張上、さし糸とて糸にてとぢ、其余りお総角に結びたるも有、此事別にくはしく記す、是は公家の事也、武家方にて先はなき事なるべし、棚は二つあり、厨子二つ扉の内、上に大黒左えびす、右の蒔絵下には左獅子右狛犬、筆返し有、蝶あし也、