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義経記

義経ひでひらに御対面の事
ひでひらお、秀平とおもはん者は、吉次に引出物せよと申ければ、嫡子やすひら、白かわ百枚、わしの羽百しり、よき馬三十匹、白くらおきてぞ引にけり、〈○中略〉秀平これお見て、しゝのかわも、わしの尾も、今はよもふそくあらじ、御へんのこのむ物なればとて、かいすりたるからひつ(○○○○○○○○○○)のふたに砂金一ふた入てぞとらせける、
鬼一法眼の事
御さうし、人にしのぶ程げに心ぐるしき物はなし、いつまでかくて有べきならねば、法眼にかくとしらせばやとぞの給ひける、姫君は御たもとにすがり、かなしみ給へども、我は六たうに望み有、さらばそれお見せ給ひ候はんにやとの給ひければ、あす聞て父にうしなはれん事、力なしとおもひけれども、かうじゆおぐして、父の秘蔵しける宝蔵に入て、ぢう〳〵の巻物の中に、かねまきしたるからひつに入たる、六たう兵法一巻の書お取出して奉る、