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皇都午睡
三編上
座敷廻り道具おいはゞ、京都第一にして、諸品器用にて立派なる事なり、箪笥、仏壇、戸棚の類ひ、戸障子、襖に至る迄、善美お尽せり、江戸は価も安けれど、都て手薄く、不断沢山につかふには為あしかるべし、〈○中略〉大坂は見だめ不束にして、手丈夫なるお愛す、江都は又火早き土地ゆえ、諸道具共、其日々々の用お弁じる計りにて、飾の道具は見たくてもなき位なり、〈○中略〉相応の暮しの商人に、小袖箪笥一つあらば極上なり、跡は皆背負ひ葛籠が、人数程あればよきと見えたり、故に仏壇、金屏風、重箪笥(○○○)なんどに、美お尽す事お好まず、京都は大に異なり、