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類聚名物考調度
十一
火桶の画様
古き火桶の絵に常夏お書たる有り、俊明が家にも伝へもたる桐火桶は、後水尾院〈或は東福門院〉の命婦とも雲ひ伝へたるにも、この〓麦の絵お書たり、桐火桶の香炉もまた同じ絵様なり、或人雲、定家卿の歌に、霜さゆるあしたの原の冬がれにひと花咲るやまとなでしこ、といへる意にて、一花お火によせたるならんといへり、芭蕉翁の発句に、霜の後撫子さける火桶かな、とせしはまたく此意によれり、