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万宝鄙事記
三/火
土火桶(○○○)といふ物有、近年京都にはやる、桐火桶の形に似て大也、廻りに小窻多し、上に蓋あり、ふたにも両にまど有、中は取手有て、緒通しのあな有、下に灰お入て、おきおふたつばかり入れおけば、一日一夜きえず、ひるは上に衣衾おおほひて手おあぶり、膝おあたゝめ、よるは夜服の内に入て、終夜身おあたゝむ、甚だ老人に可なり、外おば紙にてはるべし、常の糊又しぶなどは離れやすし、大豆の煮汁のあめの如くなるお用、紙おもみ豆汁お糊として張るべし、この器湯婆(たんほ)温石お用るにまされり、物お書に、寒月手こゞゆる時もちひてもよし、