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備前老人物語
一渡辺水庵翁は、火燵きらひなれども、とし寄の火燵にあたらぬはすげなきもの也とて、いかにも火およはくして、常によりそひて居られけり、寒き比客来れば、まづ火燵へより給へと請じられけれども、老人といひ、武功有る人といひ、たやすく近づく人すくなかりけり、かくては物語もしまずとて、置火燵(○○○)お出しければ、客も心やすく火にあたり、ゆるやかに四方山の物語せられしと也、客多き時は、なお置火燵お出されしと也、今時かく客あしらひする人まれなるべV 覆醤続集