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西鶴織留

品玉とる種の松茸
或時宵に焼たる鍋の下に、其朝まで火の残りし事、是は不思議と焼草に気お付けて見しに、茄子の木犬蓼の灰ゆえに、火の消ん事おためして、是は人のしらぬ重宝と思ひ付き、手振で江戸へくだり、銅細工する人おかたらひ、はじめて懐炉といふ物お仕出し、雪月の比より売ける程に、是は老人楽人の養生、夜づめの侍衆の為と成り、次第々々にはやれば、後には御火鉢御火入の長持灰とて看板出し、大分うりて程なく分限になり、〈○中略〉林勘兵衛といふ名は、ひそかにしてのたのしやなり、