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観古雑帖
初篇
玉箒〈俗称ねんど草、亦こうや箒、或雲、茶せん柴、野生宿根高二三尺、靡状長きは四尺に及べり、八九月小白花開く、一蕚十二花、其状白朮花に似て小様なるもの也、〉東大寺の宝蔵なる玉箒は、長二尺許、箒鬚の秒毎に紺色の細珠お帽らしめ把は紫革にて包たる上お、金の糸がねに五色の細珠お貫たるもてまきしめたるが、年おへて糸かねの絶(き)れ損ねたりと見ゆるもの二柄あり、紺珠揺々として塵お駆るの具に非ず、一時の儀箒のみ、彼の万葉集なる天平宝字二年正月三日の初子の玉箒即是なるべきことは、同宝蔵に鉄〓金嵌の儀鋤ありて、其柄に子日辛鋤、天平宝字二年正月と銘せる、同時の用相証すべき也、但二柄は帝〈○孝謙〉と光明皇后との御ならん歟、諸王卿に賜しは其製の精麁今知べからず、