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大相撲評判記

水引幕古実
四本柱の上に張幕お水引幕(○○○)と号るは、東西の力者精力お励まして勝負おいどむ、是陽と陽とお闘かはす事なり、陽気相戦ときは陽火お生、たとへば檜と檜とすり合すときは火お生ずるが如し、此理おもつて陽火お鎮むるため、水に表して水引幕といふ也、かるがゆえにはる時も北より張出し、北にてはりおさむ、北は陰にして水徳お主り、易によりては坎なり、猶絹の色は黒なるべけれども、是も後世風流の好みより色々の絹お用る也、
○按ずるに、此に陽火お鎮むる為に水に表して水引幕といふ也とあるは俗説なり、水引の解釈は帽額の条にあり、