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安斎随筆
前編十
一袖几帳 袖几帳と雲は、几帳のつくりざまあるにはあらず、人おも見じ我がかほおも人に見られじとて、袖おかほにおほふが、几帳立たるごとくなれば、その事お袖几帳と雲也、枕草子に、頭中将斉信卿に、何人か清少納言の事おあしざまに申きかせけるによりて、斉信卿は清少納言お見じとて、袖おかほにおほひふたき給ひしが、後に清少納言あしからぬ事しれて、かほに袖おほふ事やみし事お、かの草子に、さてのちには袖ぎちやうなどとりのけて、おもひなおり給ふめりしと書ける、されば袖几帳と雲は、枕几帳、三尺の几帳など雲たぐひにはあらず、