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源氏物語
二十/槿
時々につけても、人のこゝろおうつすめる、花もみぢのさかりよりも、冬の夜のすめる月に、雪のひかりあひたる空こそ、あやしう色なき物の身にしみて、此世のほかのことまで思ひながされ、おもしろさも哀さも残らぬおりなれ、すさまじきためしにいひおきけん、人の心あさゝよとて、みすまきあげさせ給、〈○下略〉