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玉勝間
十二
から紙同記〈○台記別記〉に、寝殿簾中調度未立、上達部座障子可張絹、今日猶為唐紙、不可然とある、この唐紙は、唐国の紙おたうしといふ、それにはあらじ、これは今の世にも、衾障子にはる、紋ある一種の紙あるそれなるべし、これお唐紙といふよしは、ひまなく紋の有て、よのつねの紙とはそのさま異なれば也、すべてよのつねなると、ことなる物おば、唐某といふ、つねのこと也、さていにしへに障子といへるは、多くは衾障子のことにて、今いふ障子はあかり障子也、さて又ふすま障子といふよしは、衾おひろげたらんやうに張たる故也、今世にこれおたゞにふすまとのみいふは、庖丁刀といふべきお、庖丁とのみいふと同じたぐひの省名也、又此衾障子おから紙ともいふは、件のから紙して張たるよしにて、唐紙障子のはぶき也、