[p.0869]
柳亭記

畳 障子
昔の障子は、今いふからかみなり、大内のあら海の御障子ととなふるものなど、画からかみなるは、たれ〳〵も知る事なり、その障子の骨に、たゞ一重紙お張るは、明おとらんが為なれば、明り障子といひしが、今の障子なり、俗に障子の板お腰といふ、その板のなきお、明障子といふとはたがへり、からかみといふは、唐紙に張たる障子といふ事なるべけれど、ふすまといふ意更に考へえず、十訓抄二巻初丁うら、御使お椽にすへ、あかり障子おへだてゝこゝに謁す、古事談三の巻、美作守顕能の許に雲々の条に、雑色相具して遣たりければ、明障子の内に読経してあり雲々、明障子といひし事、是より古くありしが、意おとめず見すごして、何の書なりしか忘れたり、見出して書加ふべし、