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鳩巣小説

一堀田筑前守殿、〈○中略〉存生の内は、常憲院様〈○徳川綱吉○中略〉役者お御近習に被召仕候ことなど無之候、一度御能有之筈の処、俄に雨天に相成候て、油障子(○○○)お可申付由、牧野備後守どの申され候、筑前殿被申候は、たとひ公家衆など御馳走の御能にて、一度も二度も延候以後、雨天に候ばば油障子被仰付御能有之可然候、是は御慰の御能にて候、雨天に候はヾ、いく度も御延引なされ、いつにても晴天の節仰付られたるがよく候由、達て申上られ、御能止、