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源平盛衰記

清盛息女事
御娘八人御座けるも、皆取々に幸し絡へり、一は〈○中略〉花山院左大臣兼雅の御台盤所に成給へり、〈○中略〉此御台所は御美(みめ)も厳(うつくし)く、情も深く御座ける上、天下に類なき絵書にてぞ御座ける、紫宸殿の御障子(○○○○○○○)〈○長門本作花山院公卿座障子〉に、伊勢物語お絵に書せ給ふ御事あり、〈○中略〉八は大納言有房卿の北方也、絵書花結諸道に達し給へり、〈○中略〉手跡さへ厳(うつくしく)して、画図の障子(○○○○○)に、百詠の心お絵に書せ給て、やがて一筆に色紙形の銘おも書給たりければ、院も希代の女房なりとぞ仰ける、