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貞丈雑記
十四/家作
一四枚折屏風(○○○○○)の事、今世の俗語に、武士の切腹する時のみ用ふると雲ふは、あとかたもなき説なり、不吉の物にあらず、古代は禁裏にて、正月にも用ひられ、又賀にも用ひらると見えて、古書にあり、躬恒集、え(延喜)ぎ十四年二月十四日おほせによりて奉る、いづみの大将の四十賀の屏風四帖、〈四枚の事〉うちよりてうじてつかはす、又兼盛集に、内の御屏風四帖〈四枚の事〉わか、春正月え(会)する所、
あたらしき年のはじめにあひくれど此の春ばかりたのしきはなし、と見えたり、此等お以て常に用ふる物と知るべし、
○按ずるに、屏風四帖とあるは、四枚折お雲ふにあらず、四隻のことなり、古今著聞集に、四枚屏風お一帖めしよせさせ給ひて雲々とあるにて知るべし、