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述斎偶筆
楽翁君の雅尚、よのつねならざりしは、人も知る所なれど、其中にも意表に出しは、玻璃板(○○○)のいと大なるお屏風に嵌せられき、こは君もと多病にして、老後雪月おながくめでらるれば、風寒に傷められしこと屢なりしお、防がんための料なりけり、君は倹素お専らとして、痛く華美お戒められしが、雪月の為には、かゝる物おさへ備られし事、いと貴とからずや、