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類聚名物考
調度四
屏風に色紙短冊押様の事
今按に、経師の伝に、屏風障子へ色紙張には、長角半といへる習ひ有、たとへば四季の詩歌ならば、二枚ならべて張、是お長といふ也、恋の詩歌ならば一枚はあげ、一枚はさげて、上の色紙の左の下の角と、下の色紙の右の上の角とつぎ合せて、石畳のさまに押お角と雲也、又雑の詩歌ならば、前の色紙の左のわきの中比へ、後の色紙の頭お並べて押、是お半といふ也、是故実なりとかや、
長 角 半屏風に押す色紙染分の事
今案に、屏風に押色紙がたは、二枚づゝ並べて張て、色は二色に染分るなり、御所方の御屏風お拝見せしに、みなその定也、今年安永五年三月、廿一日、御室御座敷拝見せしに、堂上方寄合書の中屏風お立られしも、右の如し、経師家の伝に、長角半と雲張様ありといへども、古へはさのみその定も聞えず、ことに此にいへる五色なりとて、黒く染たらんには、墨にては物かくべからず、わけもなきことなり、