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古今著聞集
五/和歌
天暦の御時、月次御屏風の歌に、搗衣の所に兼盛詠て雲、
秋ふかき雲井の雁のこえすなり衣うつべきときや来ぬらん
紀時文、件の色紙形おかく時、筆おおさへていはく、衣うつお見て、うつべき時やきぬらんと詠ずるいかゞ、兼盛にやがてたづねらるゝ所に、申ていはく、貫之が延喜御時、同屏風に、駒迎の所に、
逢坂の関のし水にかげ見えていまやひくらん望月の駒、と詠ず、此難ありやいかゞ、時文口おとづ、しかも時文は貫之が子にてかくなんそしりける、よく〳〵浅かりけり、