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栄花物語
十六/本の雫
このごろ〈○完仁四年〉中ぐうのだいぶにて、ほうずじのおとゞ〈○藤原為光〉の御この、大なごん〈○藤原斉信〉におはする、みこあまたおはしぬべかりしお、みなうしなひ給て、たゞひめぎみひとりおぞえもいはずかしつきたてゝもたせ給へる、〈○中略〉このとのゝ三位中じやう〈○藤原長家〉ひとりおはすれば、それにやとおぼしたちて、むことりきこえ給、としごろはなにごとおかは、たゞこの御かしづきよりほかのことなくおぼしたれば、御てうどともよりはじめ、よろづの御ぐどもかがやくやうに、漢書の御屏風、文集の御屏風(○○○○○○)どもなどしあつめ給なれば、げに内春宮にまいり給はんもたへてみえたり、