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住吉社歌合
嘉応二年十月九日
旅宿時雨
二十二番 左 清輔朝臣
いなむしろしきつの浦の松風はもりくる折ぞ時雨ともしる〈○中略〉
左歌、まつの風に時雨おまがへてもりくちおりぞ時雨ともしる、といへる心よろしくみゆるお、このいなむしろは、しきつの浦といはんためおけるなるべしとはみゆれど、いなむしろのほんたいお思ふに、しきつのうらにことよかるべしとこそおぼえ侍ね、かはぞひやなぎのかげ、もしは田家などのたびねならば、おかしかるべし、住吉の松の下にはいなむしろしくべしともおぼえ侍らのなりまたいなむしろばかりにて、旅のこゝろあるべしそもおぼえぬ、いかが、