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類聚名物考
調度四
十府菅薦 とふのすがごも
世に伝へいへる所は、陸奥国より作り出せる筵のあみめ、十ある故にかく名づくといへり、今は津軽より造り出せるも、とふのすがごもとて、世にも名産のやうにいへるものあり、いかにもそのあみめ十あればいへりとのみいへるに、今思ふに是は陸奥の郷名なり、もとそこより作り出せし故にその名はあり、ことに昔は菅にて作りしと見ゆ、此所とみえて道因法師の歌に、陸奥の十府の浦とよめる歌有にて知ぬ、これ必ずしも地名なる事明らけし、又野田の菅ごもともよみ合せたれば、野田また地名なり、それお三府七府と雲よせし也、筵の名にはあらず、