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貞丈雑記
十四/家作
一畳のへりに繧〓縁と雲ふは、白地に色々の糸お以て花などおおり付けたる織物にて、へりおするなり、たとへば赤き糸にて花おすれば、花のまはりおうす赤き色にて、細くへりおとり、又其外は一段うすき色にて、へりおとるなり、其外の色も是れに准じ知るべし、貞丈雲く、繧〓は本字暈〓也、暈〓は錦の名也、色々の糸お以て、文お織るなり、文の形は不定なり、暈は日月のかさと雲ふ字なり、〈かさとは、日月の外に、輪の如くなる気お雲ふ、〉かの錦の文の廻りに、同じ色にて、濃き色と、中色と、薄色とおかさねて、三重にへりおとりて織る色、日月の廻りの暈の如くなれば、暈〓錦と雲ふなり、〈画師の彩色お入るに、官女の衣服の袖口などお、重ねたる体おいうどるに、上に重ねたるは色こく、其次は少うすく、其次に猶うすく、次には段々にうす色にいろどるお、うんげんと名付くるも、うんげん錦に似れる故の事なり、〉高麗縁は綾なり、白地に文おば黒く織るなり、是も紋は不定雲形菊花など、其外不定也、白き麻布に黒く文お染めたるは、かの綾お似せたる略物なり、