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槐記
享保十一年正月十一日、常修院殿の常に御物語に、畳に本末と雲ことあり、多は人の知らぬもの也、本末お吟味して敷たるたヽみは少なき者也、気お付て見るべしと仰られしが、真になきもの也、畳のぬい出しの方お本とす、目もろくにして、こじれもなし、ぬいさきは何としても、目も半にかヽりねじれある故に、炉のきは本の方お敷かねば、じだらくなるもの也と仰らる、今も幸雪〈常修院様御近習〉などが能覚て居て、畳屋がしかられたりと申す、 十四日参候、畳に本末と雲ことありと仰らるヽお再び窺ふ、仰に、ぬい出しの所はきわも正く、目通りも正し、是お本とす、それなりに推出していて、向の方はなり次第にへりおつくる故に、目通りもなにとしても正しからず、ねじもあるもの也と仰らる、