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源氏物語
十二/須磨
御ともにまいるべき心まうけして、わたくしの別おしむほどにや、人めもなし、さらぬ人はとぶらひまいるもおもきとがめあり、わづらはしきことまされば、所せくつどひし馬車のかたもなくさびしきに、世はうき物なりけりとおぼししらる、だいばんなどもかたへはちりばみて、たゝみ所々ひきかへしたり、みるほどだにかゝり、ましていかにあれゆかんとおぼす、