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酣中清話

倚子(いし) 蘇
本朝には李唐の礼楽制度、衣服器械、典籍文字、西土より伝はれること多きなり、今試に雲んに、倚子(いし)は古より今に至るまで用ふる坐具にて、文字もかはることなし、西土にては今用ひざるものにて、その文字もいつか椅子とかくことになりしとみえて、清の武億が後唐の碑〈文には倚子とあり〉の跋に雲へるは、該余叢考と王銍が黙記〈二書みな椅子に作る、示児編も同じ、〉に椅子は宋初より初まると雲へるお、後唐の時このものあることお知らざるとあり、自負の辞にきこゆ、されども本朝式〈唐の永徽式により玉ふ〉に倚子あれば、唐の時すでにある物なること明なり、〈○下略〉