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安斎随筆
後編五
一胡床床机 胡床と床机とは一物にあらず、別物也、貝原好古が和事始に、胡床俗に雲床机と記し、新井氏が軍器考に、床几と雲物は古の胡床也と記したるは誤也、胡床は今も猿楽の鼓打等が腰かけるもの也、是お俗に床机と称するは誤也、〈○中略〉胡床の名、日本紀神代巻に見えたり、されども唯腰かける事お雲はんとて、後代の胡床の字お借り用しなるべし、又禁庭に公事行はるゝ時、官人腰かくるに、胡床も床子〈一名床机〉両品ともに用らる、内裏儀式に床机〈床子と記たる所も有り〉も胡床も見えたり、今も両品用らるゝ也、