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甲陽軍鑑
十下/品第三十二
扠五月〈○永禄元年〉十五日に、両大将御対面の時筑摩川お隔て、両方の川のはたに床机お置、両大将ながら馬〈二〉めし、床机の際にて馬よりおり、互に御供は五人づゝ、あたりに人お払てと定、其ごとくなされ、既に川端まで乗よせ、両方馬よりおり給ふ時、景虎公手がるき大将なれば、信玄公に手遅みられじと思召候故、早馬よりおりて、床机に腰お懸給ふ、信玄公そこにて馬氈お直すふりおなされ、馬の上におひて、くるしからぬ、景虎馬にのられ候へと被仰候間、景虎おほきに腹お立、〈○下略〉