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冠辞考
三/古
こもまくら(○○○○○) 高はし 高瀬のよど たかみむすびの神
武烈紀に、〈影媛〉挙暮摩矩羅(こもまくら)、舵箇幡志須擬(たかはしすぎ)、神楽歌に、こも枕高瀬の淀や雲々、三代実錄に、〈清和紀〉薦枕、高御産栖日神社ともいへり、古へ蒋お以て枕とせしことは、万葉巻七に、薦枕、相巻之児毛(あひまくしこも)、在者社(あらばこそ)、巻十四に、麻乎其母能(まおごもの)、於夜自麻久良波(おやじまくらは)、和波麻可自夜毛(わはまかじやも)、などよめるにてしらるべし、高とつゞくることは、日本紀私記に、師説、古以蒋為枕雲、高之眼目須流故、欲言高之始有此言乎といへり、さらば床の上に枕はことに高くする物なれば、事もなく高しといふにやあらん、又掃部寮式に、〈大嘗宮の神坐の料〉坂枕一枚、長二尺五寸、広三尺、料編薦一枚、生糸一両と有、或伝に、この神床の八重畳の下に、其薦枕おかひ敷て、高くすといへり、然れば枕の方高くて、床の上斜なれば、坂枕てふ名も有歟、是ぞ上つ代の臥床のさまなるべければ、こも枕高してふも此意ならんかとも覚ゆ、