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十訓抄
十一
近ば徳大寺の右のおとゞ〈○公継〉打まかせては雲出がたき女房のもとへ、師子のかたお作りける茶椀の枕お奉るとて、うすやうおおりて、此歌おかきて、思かけぬはざまにかくし入たりける、
わびつゝはなれだに君にとこなれよかはさぬよはの枕なりとも、女房此枕は隻にはあらじとて、とかくして此歌おもとめ出されたりける、いみじくいろ〳〵しく色深し、これお歌お人してつかはして、心のうちおあらはせるたぐひ也、