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南留別志

一荒木氏何某といふ人、御使に奥州に下りしに、其少し前に、光堂の仏の目にいれたる金お、人の盗みし事あるお僉議するとて、秀衡が棺おあばきたり、〈○中略〉秀衡が棺の内より、まくら一つ、大刀一ふり出だしおきて、国主の者ども、荒木何某に見せたるなり、〈○中略〉若藤杢右衛門といふ人、奥州までしたがひ行きて見たりとて、茂卿〈○荻生徂来〉が幼き時かたりき、枕はつねのくゝり枕なり、ふさまでも深紅なるが、手にてさはれば、でうのごとく手につくとなん、