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冠辞考
五/多
たくぶすま 〈しらきの国しら山風〉
仲哀紀に、栲衾新羅国雲雲、万葉巻十五にもおなじつゞけあり、巻十四に、〈国しらぬ歌の中〉多久夫須麻(たくぶすま)、之良夜麻可是能(しらやまかぜの)雲雲、これらは栲布(たくぬの)の衾(ふすま)の白きとつゞけたり、栲(たく)は木綿(ゆふ)なるが故に、集中にしろたへといふ所に、白栲と書るもあり、既にも衣にもいへり、且古事記に、〈○歌略〉このむし衾柔(にご)やが下てふは、和らかにてあつきふすまと聞ゆるに対れば、栲布のふすまは、さわやかなれば、さやぐが下とはよみ給へるなるべし、