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枕草子

にげなきもの
三月つごもり比冬のなほしのきにくきにやあらん、うへの衣がちにて、殿上のとのいすがたもあり、つとめて日さし出るまで、式部のおもとゝひさしにねたるに、おくのやり月おあけさせ給ひて、うへのおまへ、宮の御前出させ給へれば、おきもあへずまどふお、いみじくわらはせ給ふ、かちぎぬおかみのうへにうちきて、とのいものもなにもうづもれながらあるうへに、おはしまして、ぢんよりいでいるものなど御らんず、