[p.0196][p.0197]
守貞漫稿
十八/雑服附雑事
夜著蒲団〈○中略〉
今世夜著お用ふ、大略遠州以東のみ、三河以西京坂は襟袖ある夜著と雲物お用ひず、然ど、も昔は京坂も用之歟、元文等の古昼に有之、今は下に三幅の布団おしき、上に五幅の布団お著す、寒風には五幅布団お重ね著す、布団、蒲団ともにふとんと訓ぜり、元来蒲団と雲は臥具の名に非ず今の円坐の類也、然らば今京坂に用の坐蒲団と雲者、古風に近き也、又貴人坐するには褥お用ふ也、しとねと訓ず也、貞丈雑記雲、今の世、夜具之内に蒲団と雲物あり、古はしとねと雲、蒲団と雲は円坐のこと也、東叡山の同朋相阿弥が記したる御飾書に、西指庵の納戸の内に曲彖の上に蒲団置るとあり、是円坐のことお雲也雲々、又雅亮装束抄曰、御衾は紅の打たる也、袖襟なし、長八尺にて八幅、或五幅也、是今雲布団也、御衾には頭の方に紅の練糸お太くよりて二筋ならべ、横ざまに三針刺縫也、夫お頭の標とすとあり、表小葵綾、裏単紋雲々、是天子の料也、今民間に用ふる布団には、美なる物には茶萌木等、地文同色大紋の純子、其次縮緬、海気、縞、紬、木綿に至り、皆用之、摸様染もあるべく、又紺屋形染縞物ともに、衣服用とは甚だ大形の物お良とす、裏は表に准て紅絹、藍絹、紬、木綿等也、絹の外は紅お用ひず、縹お専とし、或は萌木も用ふ、裏は必らず無地也、下に敷お敷布団(○○○)と雲、大略三幅なれども、二幅も、四幅、五幅もあり、長さは鯨尺大略五尺也、是亦頭の方の標に、緋縮緬裁お以て、小さき三角の浮世袋と古人の雲る物の如きお製し、又は幅五七分の長四五寸の物お〓縫て、一つ結びたるお縫付るも、御衾の標に似たり、上に著る布団は五幅お通例とす、長同前、蓋長幅ともに定り無之、上に著るお大布団(○○○)と雲也、又敷布団には表裏同物もあり、