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理斎随筆

何人の戯れになしたるや、紙帳の章あり曰、
それ紙帳に十徳あり、まづ求るに甚だ下直也、是一つ、疾お受けず風引かず、是二つ、灯外にありて内にて書お見る事明也、是三つ、眼お空にして塵お請けず、是四つ、寐すがた見へず、是五つ、用心の為に甚よし、是六つ、手足外より蚊喰ず、是七つ、諸虫の来るおしる、是八つ、冬用ひて寒おふせぐ、是九つ、衾とならぬ所は、紙屑買の籠内、是十也、其行末はわれもしらず、何になるやら、
誰労白猪公、自作下帷工、眠怪臥雲上、醍疑坐雪中、移来満窻月遮障四囲風、紅錦綿張客、未知此興濃、