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灯火具は、灯燭に必要なる器具お謂ふ、其類に灯台あり、灯籠あり、燭台あり、行灯あり、提灯あり、紙燭あり、蠟燭あり、松明あり、篝あり、火鑽あり、燧あり、而して灯火の原料たる膏、油、薪、炭等の如きも亦類お以て此に附載せり、
灯台は、音読してとうだいと雲ふ、灯盞ありて油お盛り、灯心お、加へて点火す、灯心お鎮するに灯〓あり、灯盞お承くるに灯械あり、灯械お承くるに台あり、台の高きお高灯台と雲ひ、低きお切灯台と雲ひ、削りたる木お以て、立鼓の如くしたるお結灯台卜雲ふ、
灯籠は、とうろうと雲ふ、竹木お瓔て籰お作り、或は金属お以て骨お作り、紙又は布帛お張りて、柱或は軒端に懸くるなり、別に金又は石お以て作り、専ら屋外にのみ用いるものあり、
行灯は、あんどうと雲ひ、提灯はてうちんと雲ふ、其用各〻古今の差異ありとの説あれど、今は行灯は、油火お点じて屋内に置き、提灯は、蠟燭お点じて夜行え用いる、
紙燭は、布お用い、又は松杉等の木お削り、油お施したるものあり、
蠟燭は、紙捻に灯心お纏ひて燭心とし、油にて蠟お煉りて、数次其心に塗り附くるなり、其麁惡なるは蒹葭の条お以て心とし、蠟に他物お混じて作るなり、
松明は、ついまつ、又はたいまつと雲ふ、松枝お割りて条とし、数条お束子たるものにて、篝は木お燃して夜お照すものなり、
火鑽は、木お鑽りて火お出すお雲ふ、之お切火と雲ふ、燧は金石お打ち合はせて、火お出すお雲ふ、之お打火と雲ふ、
膏、油は、並にあぶらと雲ふ、動物より取るお膏と雲ひ、植物より取るお油と雲ふ、又天然に産するものあり、石脳油と雲ふ、膏油は灯火の用に供し、食料に用いる等、其用甚だ広し、而して頭髪に用いるは、容飾具篇髪油条に載せ、薬物に用いるは、方技部薬方篇に載せたり、参看すべし、
薪は、たきぎと雲ふ、焚木の義にて、之お竈、炉等に用いて、燃料に充つ、故に又力まぎと雲ふ、炭は、多く櫪、楢等の木お炭竃にて焼きて作り、火お点じて暖お取り、又物お煮るに用いる、